本レビュー①~けいゆう先生:すばらしい本 あなたの体を巡る知的冒険~

5.0
すばらしい人体本レビュー

本レビュー①~けいゆう先生:すばらしい本 あなたの体を巡る知的冒険~

挨拶

ハイ!ナイストゥミーチュー!セザキングです。今回はいつもとは趣向を変えて本のレビューをしてみたいと思います。以前より色々な本のレビューをしたいと思っていたのですが、USMLEと無関係になりそうだったので行動に移せずにいました。

そんな中、医療界のとある高名な先生より献本を頂きましたので、一度腰を据えてレビューをしてみることにしました。その先生とはけいゆう先生こと、山本健人先生です!!わお。

https://twitter.com/keiyou30/status/1434840280620933120

いやぁ、とても恐れ多いのですが昨年「セザ本」を出版した際に、けいゆう先生御侍史に拙著を献上させて頂いた経緯があり、その流れなのか献本して頂きました。とりあえず西に向かって拝みますわ。

↓医学書院のHPでけいゆう先生の書評をご覧になれます

最強の医学英語学習メソッド[Web動画付] | 書籍詳細 | 書籍 | 医学書院

冗談はさておき、早速拝読させて頂いたので内容の一部を拝借させて頂きつつ、どのような内容で、どんな方が読むべきか、そして如何なるメッセ―ジが込められているのか、「かしこみかしこみ」申し上げながらレビューしてみたいと思います。ちなみにUSMLEとは殆ど関係ないので、USMLE関連の情報を期待されている方がいたらごめんなちゃい。

↓本のご購入はこちらから

↓「USMLEってなんのこっちゃ?」という方はこちらから

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本のタイトルと価格

本のタイトルは「すばらしい人体 あなたの体を巡る知的冒険」です。ダイアモンド社から出版されており、価格は単行本で1870円となっております。既にこの情報から医学書ではなく、一般人向けの本であることが分かります。ダイアモンド社は所謂医療系出版社ではありませんし、1870円という価格帯は(医師向けの)医学書では設定しえない設定です。(セザキング経験談)

けいゆう先生(山本健人先生)とは?

内容に触れる前に「けいゆう先生とはどんな先生なのか」という点から言及してみます。本の中身に目を通す前に著者のプロフィールを確認するのは、本のメッセージを汲み取る上でとても大切なことです。もしセザキングを一言で表現するなら「USMLEコンサルタント」です。では、けいゆう先生を(畏れ多くも)表現するとすれば「一般人への医療知識啓蒙活動家」です。大衆の医療リテラシーの向上のために腐心されている先生であり、膨大な知識と経験から紡ぎ出される表現が何万人もの心を打っているのでしょう。その点を踏まえて、「一般の方向けにどのようなことを語るのか」という観点を持ちながら読み進めていくことにします。

本著は一般人向けの出版物ですが、本ブログの読者の殆どは医療関係者でしょう。今後も恐らく多くの方々が一般人向けのレビューをされると思われるので、ここでは医療関係者と本著の関係性、そして本著の中に隠されたメッセージをセザキング流に解釈してみたいと思います。

本の内容(章立て)

本著は以下のように章立てされています。

1章:人体はよくできている
2章:人はなぜ病気になるのか
3章:大発見の医学史
4章:あなたの知らない健康の常識
5章:教養としての現代医療

全400ページ弱であることからも分かる通り、かなりの分量となっています。

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前半は人体の働きと病理にフォーカス

章立てを見れば一目瞭然ですが、前半は人体の働きをベースにしつつ、病理についても言及されています。正直なところ医師の僕が読むと大方の内容は「そうだよね」って感じなのですが、一般の方にとっては濃い内容となっており、新たな発見が多いのではないかと思います。コロナウイルス感染拡大が一般人の医療知識への興味をブーストしている昨今、その疑問を解決すべく存在する位置付けの本と言っても過言ではないでしょう。ちなみにあらゆる仕事、そしてあらゆる本は基本的誰かの「問題解決」が存在意義となっています。その「問題解決度」が人や本にとっての社会的評価に繋がっています。そういう点で本著は一般人の疑問も解決しまくってしまっており、「なんと羨ましい」と思わず嫉妬してしまいそうな・・・いえいえ、素晴らしい本です。

医学のこと、人体のことを分かりやすく、しかしある程度掘り下げて知りたい方は「まずこの1冊」として手に取ってもらえるといいでしょう。そして、まだ一般人に毛が生えたと言っていいような医学部の低学年の方にもオススメです。脱毛クリニックが流行っておりますが、医学知識は抜かずにフサフサを目指してください。医学部に入学してまだ見ぬ未来に目を輝かしているところに水を差すようで申し訳ないのですが、残念ながら「面白い!」と思える授業に出会えるのはそう多くはありません。受動的にいると膨大な勉強量に圧倒されてしまうため、自ら興味を持ちにいく姿勢が無いと、勉強自体が苦痛になってしまうかもしれません。そういう意味において、最初に本書のような親しみやすい本から入って「興味を育てていく」のが良いのではないかと、老婆心ながら思っちゃうのです。

中盤「医学史」への著者の興味関心に驚き

さて、個人的に興味深かったのが3章です。なんと医学史に100ページ弱費やしています。実は医師国家試験でも医学史は出題範囲の一部になっているのですが、出題されても1問程度であり殆どの医学生は「捨てます」。(セザキングはちょっとおかしいのでめちゃ勉強したが本番では間違えた笑)つまり医師も医学生も試験に合格するためには殆ど必要がない知識といって差支えのない分野が医学史なのです。そんな医学史に100ページも割くとは、これは完全に普通ではない。いくらそれらへの理解が、医学知識への深い洞察に繋がると主張しようと、さすがにあまりにもページ数が多すぎる。そう、「けいゆう先生は歴史マニア」という結論に至りました。恐らく蘊蓄を語る際に脳内麻薬がビュンビュンに出るタイプです。

すぐに横道に逸れてしまうのは僕の悪い癖ですが、実際のところ歴史に勝る教材は無いと僕は思っています。それは医に限らず、歴史はあらゆることを教えてくれます。個人の経験よりも勝るもの、それは人類が作り上げてきた歴史です。「この人魅力的だな」と感じる人は必ずと言っていいほど、教養があります。専門知識でご飯を食べていくことは出来ても、人の心を豊かにするには専門以外の知識も多分に必要です。本書内で歴史を熱く語る様を見て、「やはり色々なことに明るい人なんだろう」と感嘆したものでした。医学史ラッシュを浴びたい方は是非ご覧ください。笑

本著の後半は再び医学知識のことを解説されていきます。ここでは詳しくは触れません。

セザキングが特に気になった「問い」

さて、本書全体を通してセザキングが特に気になった箇所を紹介したいと思います。その部分は凄く目立ち、強調されているというわけではありませんが、ここにかなり力強いメッセージを感じました。

2章「病気と健康の境はどこにある?」より以下一部抜粋
こうしたウイルスは根絶やしにはできないし、する必要もない。何らかの不快な症状や命を脅かす事態が起こったときだけ、「病気」と見なして医療が介入するだけだ。つまり、「病気か病気でないか」は、誰かが必要性に応じて決めるのだ。
(略)
人間の判断を越えた、何らかの確定的な指標が「病気か否か」を決めるのではない。人間がひとまず「病気か否か」を決めるのである。

さて一部を抜粋しましたが、この項では健康と病気の境界線について言及しています。とても興味深い内容なので詳しく知りたい方が是非本書を通読して頂ければと思いますが、筆者の結論としては、「病気か否かは人間が決めている」ということになっています。「当たり前やん」と思う方もいるかもしれませんが、癌も感染症もそれ自体の器質的な存在が病気を規定するのではなく(つまり癌細胞や微生物の存在が病気を決めるのではない)、人間が「これは病気だ」と決めているのです。ここで勘違いしていけないのは、「人間=医師」ではないということです。医師が病気を診断する様から、医師により病気の有無が決定されているような印象を受けるかもしれませんが、実はそれは少し違います。この人間には、医師だけでなく、患者本人も含まれます。ここまでは理解されている方も多いと思いますが、僕の考えでは実はこの人間には「他者」も含まれ、言い換えると「人間=社会」とも言えるのです。

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問いへの考察:病気は誰が決める?

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僕はけいゆう先生の考察に全面的に賛成ですし、この文章には「中々理解するのは難しいかもしれないけど、病気って浮動的、量子的なもんだよね。でもこの理解が凄く大事なのよ」という控え目な表現なのに、しかしとても強いメッセージを感じました。何故なら、必ずしもその「必要性」に応じて医療行為が行われているとは限らないからです。非常に判断が難しいところなのですが、「癌があるから病気で治療が必要!」という認識は危険だし、「菌がいるから抗生剤!」という考えも危ういのです。ただ扱うのが難しいテーマでもあるので、このような表現になっているのだと思いますし、これはあくまでも僕の勝手な妄想だと思ってもらえればいいです。笑

ただ僕が敢えて「社会」と表現したのには理由があります。これは精神疾患に焦点を当てると理解しやすくなるでしょう。さて、「変な人と発達障害の違い」は何でしょうか。詳しくは上記の記事で解説していますが、結局は「その人本人または他者の社会生活に支障があるかどうか」なのです。つまり多少「変」であっても誰も困っていなければそれは介入の必要性がないので病気とは言えません。一方で、「その性格が故に本人が悩んでいれば」それは介入の余地があるので、受診に至れば診断がなされます。また「本人は困ってなくても周りが手を焼いていれば」それも病気と表現することができます。実際に精神科の医療現場では、家族や友人が嫌がる本人を無理やり説得させて受診に至るケースによく遭遇します。やはり、「誰かが必要性に応じて」決定されます。

こんな話があります。江戸の世は今よりも何十倍も何百倍も職業の種類がありました。そのため性格特性に合わせた職業選択ができたのですが、今やその種類が激減し誰もがサラリーマンになることが求められる時代になってしまいました。もし仮に一人で黙々と職人として刃を研いでいたら何も困らなかった寡黙な青年も、一度村を出て会社で働ければ全く違う能力が求められるようになり、そこで人間関係のトラブルが頻発し、「あいつは発達障害だから」と言われるようになった。さて、誰が病気を決めたのか、それは社会であり、つまり我々なのです。本著で語られるこの「介入の必要性」への言及は、多くの方にとって「健康とは何か?」という疑問を再提起になっています。

最後に

最後になりますが、本著では一般人向けに医学知識を面白く、しかく重厚に解説してくれています。そして、その知識を持ってしてどのように健康や病気と向きあうのか、目の前に溢れる情報をどのように解釈していくのか、そららの疑問に対して持つべき姿勢をけいゆう先生が照らしてくれています。

もし興味を持たれた方がいましたら是非笑読されてください。

本当にUSMLEのことに一切触れなかったな。笑

それではまた。しーや。

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