USMLE受験層の変化
挨拶
ハイ!ナイストゥミーチュー!セザキングです。
USMLEコンサルタントとして活動して10年以上が経ちますが、最近サロンの中で明らかな変化を感じています。以前は学生が大半だった(立ち上げ当初は8割)のに、今はその割合が完全に逆転し大半が医師(ECFMG取得者は約70名)です。しかも10年目前後、30代後半〜40代前半という層が目立って増えています。

「何故医師、特に10年目前後の方がUSMLE受験を始めるのか」
今日はその変化について、現場で感じていることを正直に書いてみます。最初の一歩を踏み出そうとしている方の背中を押せたらと思います。
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以前の受験層——学生が主役だった時代
USMLEといえば、医学生が在学中から準備を始めて、卒業後すぐに臨床留学を目指すというイメージを持つ方も多いかと思います。実際に僕がコンサルタントを始めた頃は、サロンの大半が医学生でした。それはコロナの影響も多分にあったと思います。2020年4月当時、大学の対面講義や部活などの殆どの機能が停止・縮小化され、医学生は時間を持て余していました。そのタイミングで拙著「最強の医学英語(通称セザ本)」が発売され、小さなUSMLEブームが起きていました。そのためか、当初の入会者の大半は医学生で、「以前より興味のあったUSMLEにこのタイミングで挑戦したい」という声をよく聞いたものです。しかし、日常生活が戻ると同時にそんなブームは去っていきました。
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ブームとは関係なく、当時はUSMLEに興味を持つ多くの方が医学生、または卒業して間もない若手医師でした。当時、10回以上の講演会を開催しましたがやはり9割以上は医学生・若手医師でした。「若いうちに挑戦したい」「日本の研修が始まる前に受験したい」そういう動機が多く、当時は中堅医師は全くといって良いほど見かけませんでした。その時勢が「安定を捨てて挑戦したい」と言わせないような空気を作っていたのでしょうか。
医師の割合が増えたとはいえ、今医学生の留学への興味が消失したというわけではありません。逆にUSMLEの情報にアクセスしやすくなったことや、周囲に興味のある人が増えたことによって、僕のところまでリーチする人が少なくなったという側面もあるでしょう。
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今の受験層——30~40代受験生が爆増
今は違います。30代前半〜40代前半の医師、つまり卒業10年前後経った方々が増えています。研修を終え、独り立ちし、立場的にも経済的にも安定している彼らは何故敢えてUSMLE受験・臨床留学というリスクを取るのでしょうか。
彼らが口にする理由はおおよそ共通しています。
「自分のしたいことが今の環境では見えない」
「キャリアがなんとなく行き詰まってきた気がする」そして・・・
「10年後、20年後がはっきり見えてしまった。それがむしろ怖いんです」
悪い環境にいるわけではない。収入も安定している。でもどこか「このままでいいのか」という感覚が拭えない。そういった方が多いです。
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なぜ今この層が増えているのか
いくつか理由が考えられます。まずは一般的に言われている理由を一緒に考えてみましょう。
非常にシンプルな理由は「情報へのアクセス」です。臨床留学という選択肢が10年前より身近になっています。手前味噌ではありますが、USMLEの一般的な情報はこのブログだけでもほぼ網羅できますし、他にも有益な情報発信サイトは沢山あります。10年前は誇張ではなく、USMLE関連の情報はネット上に本当に落ちていませんでした。あってもごく一握りの天才の受験体験記くらいでした。
USMLE STEP1対策・勉強法のまとめ~2024/8/29更新~
情報にアクセスしやすくなり、医学生だけでなく多く医師が合格していたら当然「自分にもできるかもしれない」と思えるようになります。
ただ、卒業10年目前後の医師が敢えて挑戦に踏み出しているその背景には普段あまり語られることのない医師特有の事情があるのです。
医師10年目クライシス
USMLE受験を始める医師の最近のプロファイルはこちら
専門医(+学位)取得後
子育て中
同じ仕事の繰り返し
仕事もある程度落ち着いてきているが、その仕事内容はマンネリ。そして、上司の業績に貢献するような仕事にウンザリ。ここままでいいのかと不安は募りばかリ。。。これがまさに「医師10年目クライシス」です。
ちょっと韻を踏んでみましたが、マジでこれです。これは医学部特有の事情が絡んでいます。医師になるまでの道のりを振り返ってみましょう。
医学部に入るために熾烈な受験戦争に勝ち抜く必要があります。入学後、ほんのわずかなモナトリアムを経て、専門課程に入っていきます。目の前の定期試験を乗り切るために命を削り、気が付いたらCBTはもう前の前、あららOSCEが終わったらもう実習開始です。そして、医学生最大の悩みマッチングが訪れ、卒業試験・国家試験をサバイブすると研修医の出来上がり、2年の研修中に後期研修先を選び、当然のように専門医取得を目指し、人によっては学位も取りに行きます。そんな時期に結婚、出産、子育てと進んでいく人も多いでしょう。自分の時間はどんどんなくなります。さて、専門医も学位も取れた、子供も成長し少し手が離れた。さて、自分は何がしたいのだろうか。
医師のキャリアはエスカレーターの如くです。医学部受験から専門医取得までの道のりが予め設計されています。そして、その道のりは「試験に合格せねばならない」「病院を選ばねばならない」「診療科を選択せねばならない」「専門医を取らねばならない」と、「ねばならない」で満たされています。自分の希望がなくとも、選択肢を選んでいくことで一人前になれるシステムが出来上がっているのです。ただ、ここで問題なのは、そこに「○○したい」という希望があったのか、そしてその「○○したい」は提示された選択肢の中から相対的に選んだものではなく、心から希望したものなのか、ということです。
例えば、学生時代に海外への憧れがあり、それは嘘偽りない気持ちであったとしましょう。そんな憧れを持つ人は多いと思いますが、日常生活はもっと現実的な「せねばならない」ことで満たされています。するとその憧れはいつのまにか心の押し入れの奥にしまわれてしまい、自分の気持ちであったも容易に思い出すことができなくなっていきます。
エスカレーターに乗ること自体が問題なのではありません。大事なことはその行先を自分で決めており、そして、専門医・学位取得という大きな「せねばならない」駅を通過した後に行き先を見失わないことです。ふと肩の荷が下りた時にこう考える人がいます。

「そういえば海外に行きたかったな。年齢的に挑戦するなら今がラストチャンスではないか。」
やや余談というか完全に私見なのですが、人生の大きな岐路を選択する際に非常に重要なタイミングの一つは「子供が小学校に入る時」です。独り身であれば別ですが、家族がいる場合、留学は家族全体の問題になります。子供も子供なりの人間関係を構築していきます。物心がつけば、環境変化へのストレスも大きくなっていきます。そして、小学校受験をするのであればその準備もいるでしょう。もちろん、お子さんが大きくなってから渡米する人も沢山います。ただ、実際に「長男・長女が小学校に入るまでに方向性を決めたい」という意見も沢山聞くのです。
そんな迷える時期が医師10年目なのです。本当に安定を捨てるのか悩み、医局との距離感に苦慮し、今から勉強して合格できるのかと不安になります。ただ、それでも自分の気持ちに嘘はつけないと決心し、勉強を開始する(サロンの門を叩く)人が増えてきているのです。
何歳からでも遅くない、は本当か
さて改めて、最も悩ましい問いの一つに回答してみましょう。

「30代~40代から始めても間に合いますか?」
正直な答えは「決して簡単ではないが、遅すぎるということはない」でしょうか。
特にレジデンシーのマッチングは年齢が上がるほど(正確には卒後年数が増えるほど)不利になる側面がありますし、そもそも年を重ねれば家族や経済的な事情も絡んできます。そうであっても、「不可能か」と言われれば、決してそんなことはありません。何故なら。実際にサロンの卒業生の中には30代後半・40代で渡米し、ポジションをゲットした方が何人もいるからです。中にはいきなりアテンディングになった方もいます。そして、今も多くのベテラン医師達が仕事や子育ての合間を縫って日々勉強しています。
そもそもの話ですが、人生において大事なことはなんでしょうか。それはもちろん人それぞれだとは思いますが、「後悔しないこと」これだけは否定できない共通の思いなのではないでしょうか。上手くいくかどうかは分からないが、そもそも短期的な成功が長期的な幸せに繋がるか分からないし、目の前の失敗は将来の成功に繋がるかもしれません。いずれにせよ、成功も失敗も挑戦しないことには起こりません。後悔なきように生きたいものです。
シニア勢の成功の条件
誰でも挑戦可能とは言ったものの、時間もあってしがらみの少ない医学生と比較したら当然色々な面で不利でしょう。それでも成功する人にはどのような条件があるのでしょうか。これまでのコンサルト経験より3つの条件を抽出してみました。
①時間の捻出が上手い
まずは何よりも試験に合格しないことには話が始まりません。何とか仕事や子育ての合間を縫って勉強するわけですが、普通に暮らしていたのではそんな余裕は生まれません。そこであらゆる方法を使って可処分時間を最大化し、それを勉強に割り当てるしかありません。
成功者で共通していることの一つは「朝の時間を有効活用している」ことでしょう。家族にも邪魔されずに勉強に集中できる時間は朝しかないと言っても過言ではないでしょう。個人的にオススメする朝時間の活用方法は「出勤前に1セット(40問)解く」です。その後、通勤時間(できれば公共交通機関にすべし)、休憩時間、隙間時間、帰宅後の時間を利用し、解説を読み、情報をまとめるという方法です。どれだけ忙しくても1日1セットを解く時間は捻出できます。まずはここを目指してください。
②退路を断っている
全員ではないですが、新たなことに挑戦するにあたって、退路を断つ(=覚悟を決める)方が多いです。USMLE受験は決して楽なものではありません。そんな辛いことを自ら選択したら心が折れて辞めたくなることもあるでしょう。そんな時にいつでも戻れるような環境があれば、覚悟は決まらずにいつまでも中途半端な姿勢になってしまいます。そんな甘い気持ちで乗り切れるようなものではありません。ある人はリサーチで渡米する際に家を売りました。勉強時間確保のために職場を変える人もいます。医局を辞めようとして揉める人は後を絶ちません。今の環境は守りたいけど、挑戦もしたいというのは、挑戦とは言いません。重要なことは何かを差し出す(リスクを取る)ことです。心が決まったら思い切ってコンフォートゾーンを抜け出してみましょう。
③ギバーである
人間はギバー、マッチャー、テイカーの3つに分類できると考える人がいます。文字通り、ギバーは与える人、マッチャーは取り分と差し出すものが均衡になるように調整する人、テイカーは何かを得よう、奪おうとする人です。臨床留学は受験戦争とは全く質が全く異なり、成績が優秀であればあるほど、スコアが高ければ高いほど良いポジションを得られるというわけではありません。スコアはあくまでも指標の一つであり、それ以外の要素も複雑に絡み合います。その中でも特に重要なものが「コネ」なのですが、「コネがある」というのは「相手があなたを採用するメリットがある」ということを暗に指しています。実力がある、性格が良い、英語がしゃべる、なんでもいいのですが、あなたが差し出すメリットに相手が惹かれためあなたを採用しようとするわけです。
だから僕は「相手に何を差し出すのか意識しなさい」「どうやったら相手が喜んでくれるか考えなさい」と伝えています。若い頃であれば優秀さを前面に押し出して戦うこともできるかもしれませんが、卒後年数を重ねると敢えてOld Japanase IMGを採用する理由が乏しくなります。そうであっても、「この人と一緒に働きたい」と思わせるようにするためには、相手に自分の価値を認めてもらう必要があります。そして、それができる方は往々にして誰に対してもギバーであり、誰からも喜ばれて頼られています。いきなり、性格を変えなさいとは言いませんが、自分の価値を冷静に分析し、何を提供することができるのか考えてみるのは良いかもしれません。それは必ずしも物質的なものではなく、愛嬌であり、やる気であり、丁寧さであったりします。
まだまだ重要な条件は沢山ありますがここでは言及し切れないので、後日書くことにしましょう。
最後に
USMLEに挑戦する中堅医師は誇張ではなく本当に増えています。それは日本人医師のキャリア意識の変化を表しているのかもしれません。守らなければならないものも沢山あるでしょう、そうであっても1回きりの人生です。現状に不安・違和感・不満があるのであれば、その気持ちを無視せずに向き合ってみてください。それはUSMLEである必要は全くありません。何でもいいのです。そんな夢に向かって頑張ってる人とこれからどんどん知り合いたいと思っている。ただそれだけなのです。
それではまた、しーや。
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