医師国家試験のCBT化
挨拶:USMLEコンサルタントからの観点
ハイ!ナイストゥミーチュー!セザキングです。久々の記事になります。そろそろ医師国家試験がCBT化されそうな「気がする」ので、今回は医師国家試験について少し思うところをお話します。
妄言みたいなものなので「そういうこともあるのかもね」くらいのスタンスで読んでください。
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USMLEを迎合する日本さん
これまでの日本医学教育はUSMLEの流れを迎合してきました。このブログの読者であれば既に把握されている方が多いと思いますが、日本のCBTはSTEP1を、OSCEはSTEP2CSを模倣した試験となっています。もちろん内容や試験方式に違いはありますが、モデルとしていることは間違いありません。
CBT:CBTについて考察してみた①~CBT受験生の箸休め~
この流れを汲めば、次はSTEP2CKやSTEP3も模倣するのではないかと予想できます。そして、実際に既に国試のCBT化は厚生労働省の議題に上がっており、やはりSTEP2CKを参考にしていることが分かっています。
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/2021103012A-buntan6_0.pdf
冷静に考えれば、未だに多くの受験生が同じ場所に集まり紙の問題を解くという行為は時代錯誤感が否めません。CBT化の話が出てくるのは自然な流れですし、となればCKを参考にするでしょう。
議題に上がって既に数年経過しており、トライアルも実施されております。具体的な根拠を示すことは出来ませんが、恐らくここ2,3年で段階的に導入していくのではないかと予想しています。
USMLEと国試の違い~CBT化されるとどうなる?~
僕は医師国家試験の専門家ではなくあくまでもUSMLEコンサルタントなので、国試がCBT化された場合、つまりCKみたいな試験になった場合どのような変化が起こるかという点をお話しようかなと思います。
また今回お伝えする情報は「確定:確定的なもの」「予想:可能性は高いが確定ではないもの」「可能性:可能性は高くないがあり得るもの」に分類しています。
①確定:プール問題からの出題になる=受験生毎に問題が異なる
CBTが既に導入されているので想像しやすいかと思いますが、CBT化されるとプール問題からランダムに問題が受験生に割り振られます。従来の国試とは違い受験生によって解くべき問題が異なるため、試験後に他の受験生と問題を振り返ったり考察することはできなくなります。
またこれは推察の域を出ませんがUSMLEと同じ条件であれば、「問題がランダム」という表現は実は誤りで、恐らく「問題のセットがランダム」に割り当てられます。その場合、セットの中身は予め決まっているので、偶然にも他の受験生と同じセットにあたる可能性はあります。
またプール問題は毎年作成されて徐々に入れ替えられていきますが、出題要綱の変更がない限りは内容が激変することはないと思われます。そして、恐らくパイロット問題といって採点対象外の新問も導入される可能性があります。その時点では採点されませんが、厚労省側が「これは良い問題だ」と判断した場合にプール問題として利用されるようになります。これはUSMLEで実際に行われていることです。
②確定:問題が非公開になる
CBTの問題が非公開であると同様に国試も非公開になります。以前に国試も数年間非公開(問題が回収された)になったことがあり、当時は問題再現のために予備校が奔走していました。CBT化されると問題量が膨大なものとなるため、以前にも増して再現が難しくなります。恐らく受験前に「試験内容を口外しないこと」を約束させると予想されるため、仮に何らかの方法で再現できたとしても再現された問題をそのまま掲載することはできないでしょう。
ではUSMLEはどうなっているかというと、オンライン問題集は本番の問題を参考に作り変えてさらに学びのある形にしています。その点でUWorldは本番と近い問題が収録されていることが魅力の一つになっています。プール問題という性質上、多くの類題を解けば解くほど、本番でその問題(類題)に遭遇する確率が上がります。従って、予備校としては可能な限り多くの問題を収集し、それを学びのあるものに作り変える作業が必要となりますし、受験生としてはその精度と量が最も優れた問題集を選択すればよいということになります。これまで以上に「多くの問題を解くこと」が合格率を高めるということになると予想します。
ちなみにUWのUSMLE STEP2CKでは4300問以上の問題が収録されています。国試でも何千問も解くことが求められるようになるでしょう。
③確定:音声・動画・連問が導入される
これらは恐らく確定的です。むしろ、この導入がCBT化の主たる目的でもあります。USMLEでは既にこれらは導入されていますが、具体的には特に心音を聴取させる問題が多い印象です。どこかの記事で「USMLEではコストの観点から動画の問題は導入されなかった」と見ましたが、僕の記憶では、少なくともパーキンソン病の患者の動きを見る問題が出題されていたと思います。恐らく心音以外に、呼吸音なども聴診させられるかなと思います。従って、色々な音声を聞くことが対策として必要になります。
既に国試でも連問は出題されているため、「連問導入」と聞いてもピンとこない方がいるかもしれません。CBT化された国試の連問は、従来のものとは異なり、一度選択すると後戻りができなくなります。これは実臨床を模擬体験するような目的でしょうか。ちなみにCKでは2連問、3連問があります。恐らく導入後は少なくとも3連問までは出題されるでしょう。
また予備校の問題集にも動画や音声にも対応してコンテンツが導入されるはずです。むしろそうしないと生き残れません。最近注目されているAmbossでは診察方法など実習でも使えるような知識を動画で紹介しています。メディアを利用したコンテンツをいち早く導入した教材が好まれると思います。
④予想:試験日時・場所が一律ではなくなる
CKを参考にするのであれば、これまでのように決まった日に同じ場所で受験するのではなく、一定の期間中に指定された場所、または複数の場所の中から選択して受験することになるかもしれません。これはあくまでも予想ですが、少なくとも従来の形とは異なると思います。
ちなみにUSMLEは好きな日時に好きな試験会場で受験が可能です。日本では東京と大阪に会場があります。大学で施行するのか、それとも試験実施会社に依頼して他の箱を使うのかは不明ですが、規模感を考えると個人が完全に自由に日時・場所を決定することは現実的ではなく、大学毎に場所と日時が指定される感じになりそうです。
仮にUSMLEのように完全に自由に受験が出来る場合は孤独な闘いになります。当日、嘆いたり励まし合うというようなことはできないかもしれません。とはいえ、そうなる可能性は低く、CBTと同じような形式になるでしょう。
⑤可能性:合格基準の変更とスコアの導入
CKを模倣するとすればこのような変化が起きても不思議ではないです。USMLEの採点方法はブラックボックスですが、恐らく相対評価を用いてると思われます。そのためCBT化された国試も正答率のような絶対的な評価ではなく偏差値やスコアのようなもので合否判定されると予想できます。
今のCBTに近い形になると言えばイメージしやすいかと思いますが、CKと同様に国試にもスコアが導入される可能性はあります。仮に導入されたとしても、そのスコア自体が実利をもたらす可能性は低いと思われます。国試の受験時期には既に就職先は決まっており就職にも影響はありません。現在のSTEP3のようにスコアはあくまでも飾りのようなもので、そのスコアが持つ重要性は低いと思われます。とはいえ、偏差値至上主義社会で生き抜いてきた猛者たちは国試でも大学受験の延長戦をするかもしれません。
⑥可能性:一般問題・必修問題の廃止
これもあくまで可能性の一つですが、CKに寄せるとしたら一般問題や必修問題が廃止される可能性もゼロではありません。特に一般問題は(少なくともいずれ)なくなる可能性が高いと思います。実はUSMLEも15年程前までは一般問題のような短答問題が出題されていました。しかし、徐々に臨床問題に置き換わり今では殆ど全ての問題が臨床問題形式になっています。
また、受験生によって問題が異なるのに従来のような「必修は8割以上で合格」という基準を設けることができるのか疑問です。必修問題は「医師として最低限習得すべき知識を有しているか問う」という点で確かにその存在意義は多分にあると思いますが、全て臨床問題のCKにどこまで寄せていくのか注目したいところです。
⑦予想:対策方法の変化
今の国試でも既にオンラインで問題を解く習慣が根付いてきているので、勉強方法にそこまで大きな変化はないかなと思います。質と量を伴うオンライン問題集を選択し、ひたすら解けばいいと思います。
少し裏技的な話をすれば、恐らくSTEP2CKは国試の「未来問」になります。というにも既に厚生労働省がCKを参考にしていると発言している以上、当然問題の内容もある程度参考にすると思われます。もちろん作成方法は作成者のやり方にある程度委ねられると思いますが、CKの問題を参考にするのはむしろ推奨すべきことです。とはいえ、本番の問題は手に入らないので大手の問題集、恐らくUWorldを参考する可能性があります。
僕が試験作成委員なら、UWorldの問題の中から国試でも出題できそうなものをチョイスします。そして、それをGoogle翻訳とChatGPTなどのAIを使って病歴と社会的背景などの細部を作り替えます。次に問題の内容を吟味し、選択肢を入れ替えたりします。最後に再度AIにぶち込んで修正させて完成です。実際の作成現場のことは知らないので、一人の妄言だと思ってもらっても構わないのですが、もし自分が国試受験生で、かつUSMLEにある程度興味があった場合、国試の対策も兼ねてUWのSTEP2CKをやると思います。
⑧可能性:論文問題・薬説明書問題の導入
これは可能性が高くない上に、仮にそうなったとしても大して問題にはならないと思いますが、CKではこれらの問題が出題されるので一応言及しておきます。今後国試がより実践的な試験を目指すのであれば、論文問題や薬の説明書(日本なら添付文章とか?)の導入はむしろ積極的に検討されるべきかと思います。この場合、日本語の論文を載せてもあまり実践的なスキルとは言いにくいので、英語問題の一つとして英語の論文を読ませて連問に答えさせるCK形式の問題が導入されるのが丁度いいかなと思います。
⑨可能性:STEP3を参考にした研修後試験の導入
これは国試とは関係ありませんが、最終的にSTEP3をも模倣し初期研修後(また研修中)に試験を導入してくる可能性も否定できません。特にSTEP3のCCSという試験は、コンピューター上で診察から診断、治療まで行うシミュレーション試験で非常に実践的です。研修にも役立ちますし、研修で得たスキルを評価するシステムとしても理想的です。
研修終了後、多くの医師が美容外科など特定の診療科に集中する一方で、外科医をはじめとする敬遠される診療科もあり、この傾向が話題になっています。それ自体が悪いことだとは全く思いませんが、診療科が決まっているからといって研修が疎かになってしまうのは困りものです。研修終了時、または修了後の試験導入はそのような問題に一石を投じますし、プログラム作成側が改めて真剣に研修プログラムについて再考するきっかけとなります。僕は遠くない未来に研修後試験が導入される可能性が高いとみています。
まとめ
今回は「国試のCBT化」という非常に大きな問題をUSMLEコンサルタントの立場から切り込んでみました。対策が急務というような状況ではありませんが、今のうちから様々な可能性を考慮し個々人で今後どのように準備していくか考えるきっかけにして頂けたらと思います。
既にUSMLEを勉強している人にとっては全く問題ないどころか完全に優利な立場なので国試までにCKの合格を目指していきましょう。
今回の記事をきっかけにUSMLEについて興味を持った方は是非、このブログや僕のYouTubeをご覧ください。
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