【書評】米国小児外科医への道――宮田真先生の新著を読んで
はじめに
ハイ!ナイストゥミーチュー!セザキングです。最近、X(旧Twitter)でアカウントを乗っ取られて奮闘していたら色々と対応が後手後手になっておりました。ようやく復活です。
今回は、米国で小児外科医として活躍されている宮田真先生の新著をご紹介したいと思います。実は宮田先生とは直接の面識はないのですが(僕の直感が近々縁があることを伝えてくれますが笑)、アメリカ留学を目指す(USMLEを勉強する)方々の背中を押す僕の活動に感銘を受けてくださって(ありがてぇ)いるとのことで、この度献本していただきました。大変光栄なことです。
本書について
『お前は小児外科医になれない ―誰かの大切な子供にメスを入れるということ―』著者:宮田真(セントルイス大学医学部・カーディナルグレノン小児病院) 出版社:中外医学社 定価:3,300円(税込)

本書は、アメリカで歴代初の日本人小児外科医となった宮田真先生が、その道のりをありのままに綴った自伝的記録である。日本と異なり米国では診療科を自由に選択することはできず、その席数が厳格に決められている。外国人がアメリカで正規ルートを経て外科研修に入ること自体、極めて困難なことだが、宮田先生はなんど外科のサブスペシャリティの中でも最難関とされ、多くのアメリカ人医師でさえ志半ばで断念する「小児外科フェローシップ」にまで進んだという。これまで数多くの日本人医師が臨床留学に挑戦する(挫折する)のを目の前で見てきた我が身としては、その異色のキャリアには驚くほかない。日本人には想像もできないような見えない高い壁があるのだ。一体どのようにしてその頂きに達したのであろうか。
構成は大きく2つの幕に分かれている。
第1幕では、失敗と挫折を繰り返しながらも夢を実現させるまでの「Making」の過程が描かれる。デトロイトでの試練、カナダの小児外科フェローシッププログラムに挑むエピソードなど、誰もやったことがないような方法で道を切り拓いていく様子が生々しく綴られている。「お前は小児外科医になれない」そんな冷徹な言葉も何度も浴びせられたようだ。夢を諦めさせる存在は世界のどこにでも存在する。
第2幕では、念願の小児外科医として独り立ちしてからの臨床の記録が描かれる。小さな患者との出会いと別れ、アメリカ医療のリアル、チーム医療の光と影など、外科医としての喜びと葛藤がありのままに伝わってくる。また子供たちへの日本語教育など、家族に関することも赤裸々に語られている。
初めに断っておくが本書はいわゆる臨床留学の指南書ではない。同じことをすれば同じ結果が出るような再現性もない。しかし読む人によっては、魂を揺さぶられるような一冊になり得る。そういう本だと思う。
こんな方に読んでほしい
本書には強いメッセージ性があり、さまざまな方に手に取っていただきたいのだが、あえて3つのターゲットを挙げるとすれば以下のようになる。
①これから臨床留学を目指す方
本書にはレジデンシーを経てフェローを経てどのようにキャリアアップをしていくか、またインターナショナルフェローとして入った医師がどのように扱われているかなど、なかなか日本では得られない生々しい情報が詳細に記されている。
特に印象的なのは、アメリカの医療現場における採用・評価の実態が赤裸々に描かれている点だ。アメリカでは実力主義が徹底されており、どれだけ優秀であっても結果が出なければ容赦なくクビになる現実がある。(成功者バイアスのためか日本人の失敗体験は殆ど表に出てこないが現実には多々ある)本書には実際に職を失った同僚たちのエピソードが具体的に綴られており、その描写は非常に生々しく、クビとはほぼ無縁の日本の医療現場では到底想像できないものだ。同時に、アメリカの採用においては単なる技術力だけでなく、チームへの貢献度やコミュニケーション能力、そして組織への適応力が強く重視されることも伝わってくる。
小児外科医以外を目指す方にとっても非常に有益な内容であり、米国への臨床留学を目指す方にとって間違いなく参考になる一冊だ。
②米国の医療の現状や読み物に関心がある方
本書からは米国での医療の実情が鮮明に浮かび上がる。医師だけでなく一般の方が読んでも十分に面白い内容だ。米国の医療システムや現場のあり方は、日本と似ている部分もあれば全く異なる部分もある。日本の良さや問題点を改めて認識するきっかけにもなり、読み物としても非常に読み応えがある。
個人的に特に印象的なのは、同じ北米であっても地域によって全く異なる医療現場の実態が描かれている点だ。フランス語圏のカナダで過ごした2年間、宮田先生はほとんど銃創を目にすることがなかった。しかしアメリカに戻った途端、小児の銃創症例が何件も立て続けに飛び込んでくる。銃社会アメリカの現実が、単なる統計や報道としてではなく、外科医の目線から臨場感をもってありありと伝わってくる。同じ北米でもこれほどまでに異なるのかという驚きとともに、アメリカという国の複雑さ・多様さが非常にリアルに感じられる場面だ。
動かぬ小さな足をみる。
「これがもし自分の子供だったら。。。自分はもうここにはいられない。。。」
同じく二児の父として、その感情は共感せずにいられない。日本の豊かさに改めて感謝するきっかけでもあり、命の儚さを痛感するシーンでもあり、そして文化の違いをこれでもかと教えてくれる教書ともなる。
③何かに挑戦しようとする方(個人的に最も重要)
これが僕が最も強くオススメしたい読者層だ。本書は挑戦する人の背中を強く押す名著だ。米国で小児外科医になることを目指すと口にするのは容易でも、実際にそれを成し遂げるのは極めて困難だ。しかし宮田先生はあらゆる手段を使って、その頂にたどり着いた。それは決して輝かしいだけの道ではなく、非常に生々しく泥だらけで、誰も通ったことがないような獣道を行くようなエピソードの連続だった。これから何かに挑戦しようとするすべての方にとって、大きな勇気を与えてくれる一冊だ。
著者自身もまえがきの中で、「読者の10%くらいの人にとって魂を揺さぶられるような高揚感を与えられたら」と書いている。この言葉に、僕自身も強く共感する。実は僕の拙著においても、医学英語・USMLEというテーマを扱いながら、一部の読者にとっては自己啓発本のような存在になれたらという思いがあった。その点で、宮田先生の姿勢に非常にシンパシーを感じている。
そして僕自身、本によって人生を変えられてきた一人だ。だからこそ声を大にして言いたいのだが、今何かに悩んでいる方は、一度SNSやYouTube、スマホを手放して、本を手に取ってみてほしい。答えはそこにあるかもしれない。
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本書が伝える最も強いメッセージ
個人的に(勝手に)最も強く感じたメッセージは、「自分の人生を噛みしめて、しっかり歩んでいく」ということだ。言い換えれば、自分の人生に、自分の欲求や願望に、ど真面目に真正面から向き合うということだ。
僕たちの日常は油断をしていると、「やりたくないけれどやらなければならないこと」で埋もれていってしまう。そのような日々を送っていては、夢や目標に達するどころか、そもそも夢や目標を持つことすら難しくなる。そんな中、自分自身で掲げた願望や夢に真正面から、何十年もの時間をかけて向き合っていく姿に非常に感銘を受けた。
歯に衣着せぬ言い方をすれば、はっきり言って「変人」だ。(すいません笑)特に印象的だったエピソードとして、小児外科医のフェローになるためにフランス語を学んでカナダに飛ぶというものがあった。正直、正気の沙汰ではない。英語を習得することですら非常に苦労する日本人にとって、さらにフランス語を学び、それを臨床現場で使うというのは計り知れない労力だ。それでも真正面から向き合っていく姿は非常に印象的であると同時に、まさに「変人」と表現せざるを得ない。
しかし、世の中を切り開いていく人たちというのは、少なくとも現代において変人であり、スタンダードではない。これから何か大きなことを成し遂げたいと思っている方、周りの目を気にしているとしたら、それは全く気にする必要はない。他人に迷惑をかけない限りは、いくらでも変になっていいのだ。是非、今一度自分が人生をかけて成し遂げたいことを思い描き、それと向き合って欲しい。そして、皆さんにはあらゆる場面で「日本人初」であったり、独自のナンバーワンになっていただきたいと思う。
本書に欠けている「第0章」への期待
本書は非常にメッセージ性の強い一冊だが、1点どうしても気になる点がある。それは、宮田先生がどのようにしてこのような人格を陶冶されたのか、いかにしてこの人格を得られたのかということだ。
僕は精神科医でありながら、USMLEコンサルタントとして活動しており、教育者の側に属していると思っている。その立場からさまざまな方と接しているが、いわゆる「GRIT(やり抜く力)」や「利他の心」は成功に最も必要な要素だと確信しており、それらを後天的に身につけることができれば、どのような困難だって切り開いていけるはずだ。しかし、それを伝えること、与えることの難しさも知っている。だからこそ、宮田先生がお持ちのGRITや利他の心の原点がどこにあるのかが非常に気になった。
本書には「第0章」が欠けている。宮田先生の生い立ちがあまり描かれていないのだ。ご両親はどういう方だったのか、どのような幼少期を過ごされてきたのか、なぜそのような哲学を持つに至ったのか。教育者として、父親として、そして一人の人間としてそれが非常に気になるのだ。再現性のある話だとは思わない。しかし、そうであっても成功者の共通点はあるはずだし、その土壌を育むヒントはあるはずだ。
本書の中でも、その様子を垣間見ることはできる。例えば「言葉の力」を非常に強く信じられている点、実際に起こってほしいことを強く思い描く「イメージの力」、そして本を非常に頼りにされている点などだ。そうした部分はおそらく幼少期に得た何かが関係しているように感じられた。
ぜひ本書の続きを見せてほしいというのが僕の率直な期待だ。本の続編でも、SNSやブログでも構わない。宮田先生の生い立ちや人格形成について描かれた「第0章」となる続編を心待ちにしている。
本書の内容が少しでも気になった方は、ぜひ手に取っていただきたい。第二の宮田先生が世界に羽ばたくこと、そして医療に限らず日本人が世界で活躍することを心から期待している。
それでは、しーや!
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