2022年USMLEと米国マッチング事情
挨拶
ハイ!ナイストゥミーチュー!セザキングです。久しぶりにUSMLEに関する記事でもお届けしようと思います。正直、最近はUSMLEに関する目新しい情報はありません。ただ最近のマッチングや受験生の傾向には少しずつ変化が出ているような感じがあるので、そのあたりの主観を綴っていきます。まぁただの感想です。エビデンスもくそもありません。ご了承ください。
重要なアドバイス
最初に受験生にあえて1つアドバイスをするなら「ゴールありきで勉強をするほうがよい。」ということでしょうか。つまり、闇雲に勉強してハイスコアを狙うのではなく、ゴール、言い換えるとコネクション、就職先を探しながら勉強したほうがいいということです。実際に就職先が先に決まって、その後USMLEの勉強を開始するパターンをよく見かけます。一方で、ECFMGは持っていても中々マッチせずに「留学亡霊(最近よく聞く呼称)」になってしまっているcaseがあとに絶えないのです。この記事では1つずつのSTEPをみてきましょうか。
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STEP1
御存知の通りPass/Fail制度になり既に半年が経とうとしています。忘れがちなのは、ただP/Fになっただけではなく、同時に合格最低スコアが194から196に上がりました。(スコアは見えなくなっただけで内部スコアは存在している)正直殆ど影響はないとは思いますが、当落線上の人達も沢山いるのでそのような方々には多少のプレッシャーにはなっているようです。
ただ結局目に見えて難易度が上がっているような感じではないので、ハイスコアを狙う必要がなくなった受験生にとってはかなり「受けやすい(決して簡単ではない)」試験になったのではないでしょうか。
その影響のため、STEP1受験生のショートカット化が進んでいるように思えます。従来、ハイスコア狙いの所謂「ガチ勢」の使用する問題集は(Q&A➡)Rx➡UW➡Ambossの流れが王道でした。しかし、最近ではハイスコア向け問題集のAmbossを使う人は皆無となりました。また最短合格を狙う人が増えているせいか、UWのみで勝負する人もよく見かけます。ただ実際には、UWの難易度に耐えきれる人はそれほど多くないため(特に低学年の医学生は)無難にQ&AやRxから開始する人もいます。
STEP1に関する情報はこちらから
また試験内容に関してはこれも大きな変更はないようです。毎年春頃に試験問題の見直しがありますが、内容が大きく変更される時には必ずアナウンスがあります。今年は特にそのようなアナウンスは無く、また受験生に聞いても特に変化は感じなかったとのことなのでその点は心配する必要はないでしょう。
STEP1に関しては敢えて大きな変更点を挙げるのであれば、NBME模試の結果表示でしょうか。従来の模試の結果はスコアで表示されていました。それが本番の試験のP/F化に伴い、模試の結果もスコア制が廃止され、「1週間以内の受験した場合の合格率」に変更となったのです。詳細な情報は以下のURLから各自見てもらえたらと思いますが、重要なポイントは合格に必要な凡その正答率と各自の合格率でしょう。
結局明確な合格に必要な正答率は分かりませんが、模試の結果を見る限りはやはり65%前後は必要なのでしょうか。またはっきりと合格率が表示されるので、その結果をそのまま受け止めればいいと思います。「いつ受験したらいいですか」という質問が湧きそうですが、それは各人の判断としか言いようがありません。90%あれば受験する人もいれば、98%ないと受験したくない人もいるでしょう。そこは個人の判断となるわけです。
STEP2CK
次いでSTEP1のP/F化に伴い重要視されるようになったCKです。ここでは敢えて「重要視」と表現しており、「重要」とは言っていません。何故なら結局本当に重要になったのかどうか判断する根拠がないのです。確かに、アメリカの日本人医師に聞くと「アメリカの医学生もCKに力を入れているみたい」と答えて頂くことがあるのですが、では実際に現実はどうかというと、まだマッチングが開始されていないので結局よく分からないのが現状です。
そもそも、STEP1がP/F化した背景には「受験生がスコアに拘過ぎる」という理由があります。従って、「STEP1のスコアがなくなったから次はCKのスコアを重視する」となるのは本末転倒すぎるのです。従来スコアというものは、あまりにも多い受験生を絞るために足切りとして使われていました。つまり、スコアとはプログラムディレクターが目にする前に、事務員が機械的に仕分けをするための項目だったわけです。STEP1のスコアが廃止となり、CKに注目が移ること自体は確かに理解できます。ただ、現在CK以外にも「受験生の出身大学」が重視されるかもと口にしている方も複数人見かけました。言い換えるとスコアフィルターから学歴フィルターに移行するということでしょうか。大いにあり得る話ですが、そうなると「どこの馬の骨か分からない日本人」には不利な状況となるかもしれません。私感に過ぎませんが、アメリカという国は基本的に見知らぬ人を信用していないように思えます。だからこそ、握手文化や銃社会というような保身を重視するような文化が根ざしているのだでしょう。それはマッチングでも「信頼できる人を採用する」、つまり「信頼できる人からの紹介状=コネ」を重視するという結果に繋がっていると愚考しています。となると、今拘るべきはCKのスコアではないような気がするのです。
最近の受験生をみるとスコアに拘っているのはN狙いの一部の受験生という感じで、残りは240位取れたらいいや派(足切りクリア派)、全くスコアどうでもいい派に分かれているような印象です。「CKである程度のスコアを取っておいて良かった」いう声もたまーに聞くので、スコアを上げること自体を無意味とは決して言いません。しかし、臨床留学を達成するという目的に対して果たして費用対効果が高いのかと言われると非常に悩ましいところです。
CKの教材に関しても言及すると、UWが王道なのは論を俟ちませんが、STEP1とは反対にAmbossが見直されている傾向があります。正直UWだけでも4,000問程度解かないといけないので非常にしんどいのですが、それでもカバーし切れない領域があります。例えば「医療安全」などはその典型で、体系的に学ぶ機会がないため知識を整理するのがなかなか難渋です。その点でAmbossは一定数の受験生の定評があるようです。UWとAmbossを双方とも完璧にするのは相当大変ですが、UWプラスAmboss少しというスタイルがハイスコア狙いの受験生には現時点でオススメできる受験プランかなという感じです。
OET
試験情報に関しては特に何も変更はありませんが、受験予約が非常に難しいというのが現状でしょう。紙とPCの二つの受験スタイルがあるのですが、PC(つまりプロメトリックのほう)は全く空きがなく、早く受験するなら紙(大阪)での受験を選択するしかなくなっています。もちろんたまに枠が空く事もあるのですが、中々期待しにくいのです。
結局、OETってどんな試験かというと「オーストラリア英語が聞けるかどうか」試験です。正直、それ以外の項目で落ちる人はあまりいません。(いたとしてもリスニングも一緒にスコアが足りていないことが多い)となると、大部屋のスピーカーからリスニングするよりはPCのイヤホンで聞いたほうが良いような気がするのは僕だけでしょうか。といっても予約しようがないのですが。。。
教材に関しても触れておきますが、王道はサンプル教材と公式問題集です。それに予備校の教材があったりなかったりという感じでしょうか。無難にOET Onlineを使っている人が多いですが、それ以外もちらほらいます。ただ何を使っても結局はリスニングができるかどうかなので、教材の問題ではないような気がします。結局1年間ずっと合格しないような方もいると聞くので、どこまでリスニングを徹底的にやるかという点が重要でしょう。
一番王道はOET Online
安いと定評があるのがBenchmark
STEP3
殆ど誰も興味ないと思いますが、敢えて言うならCCSを練習できるサービスが増えたことくらいです。僕の受験時代には無かったものなので、こんなのがあれば良かったなとは思います。以上。
マッチング
昨年1年間、身近な方のマッチング事情を傍から見ていましたが中々大変そうでした。家庭医志望の方で非常に優秀だったのですが、それでもマッチングには非常に苦労されていました。10年くらい遡ると、「家庭医や小児科は簡単だよ」みたいな声も聞こえていましたが、今はその事情も全く変わってしまったようです。USMLEで全く不利にならないスコアを取り、日本人としては非常に英語が堪能で、米軍病院でのフェロー経験があっても殆どインタビューに呼んでもらえませんでした。色々な事情はあると思いますが、DOの台頭が影響していることはやはり否定できないようです。この影響は家庭医だけではなく全ての診療科に言えることで、特に内科や外科は非常に厳しいとのことでした。現実的に内科や外科は日本人が採用してもらい得るプログラムは本当に数えるほどしかなく、コネ無くして勝負しようとしても非常に厳しい闘いを強いられるようです
ある(アメリカの)超有名病院の話です。そこはこれまでにIMGを採用したことがありません。ある日本人がそこに見学に来た時に「頑張って気に入られたら採用されますか」という質問を日本人のアテンディングにしたようです。そこではっきり「多分無理だよ」と。僕もそう思います。確かに可能性はゼロではないかもしれない。しかし、その可能性にかける労力はほかに廻すべきでしょう。人種の壁、言語の壁、文化の壁など、色々な壁があるわけです。その壁を「アメリカ人医学生よりも短い時間で」超えるのって正直めちゃくちゃ厳しいと思います(裏技も思いつくけどとても言えない)。となると、結局日本人、最悪IMGの採用歴のあるプログラムを狙って勝負をかけるのが現実的ということになります。
とは言っても、色々複雑な事情もあるんですよね。。。情報リテラシーの関係上、あまり多くは語れませんが、1つこれだけは言えるのが「甘い言葉には気を付けなさい」ということでしょうか。臨床留学を目指すとか、USMLEを受験するというのは他の人は違う道を行くということです。具体的には日本のキャリア形成や、家族との時間、お金、人間関係(医局とかね)、様々なものを犠牲にするわけです。どの世界にも光と影があり、SNSやTV、本などには光の部分しか映し出されていないわけですが、その裏には中々見ることのできない影が沢山潜んでいるのです。だからこそ、なるべくゴールありき、つまり勝算がありそうな勝負をすべきたと思います。見ていて結構辛いなぁというキャリアや、それはいかんだろうと思わず声が漏れてしまうようなプログラムとかも、意外とあるんですよね。キャリアを決める時にはなるべく内部の人から情報を聞き出すべきでしょう。うむ、この業界も結構闇は深い。
今回の記事ではUSMLEとマッチングの最近の情報、というよりはむしろ僕のインプレッションをお届けしました。近々更新の止まっていた動画のほうも再開しようと思っております。
それではまた、しーや。
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