在日米軍病院の日本人フェロープログラム(JPFP)——6病院すべてを訪問した医師が語る臨床留学への最初の一歩
挨拶
ハイ!ナイストゥミーチュー!セザキングです。
突然ですが、在日米軍病院の日本人フェローシッププログラム(JPFP)をご存知でしょうか?
臨床留学を目指す多くの医師が準備段階として活用しているプログラムですが、実はこの6つすべての病院に実際に足を運んだ日本人医師はほとんどいないと思います。実は先日佐世保に訪問し、全ての施設に足を踏み入れたことになりました。これまで当ブログでは米軍病院に関してはあまり触れてきませんでしたが、実際に臨床留学を目指す方の重要なポジションであることは間違いないため、一度記事にしてみることにしました。
今回はそのJPFPを公開情報をベースにしつつ、個人の経験を混ぜてご紹介したいと思います。USMLEを目指している方だけでなく、臨床留学を視野に入れているすべての医師にとって参考になれば嬉しいです。
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【本記事について】
日本人フェロー(JPFP)とは何をする仕事なのか
まず最初に、JPFPの職務内容について正確に理解しておくことが大切です。
JPFPは「米軍基地内の病院で臨床医として医療行為を行う」ポジションではありません。主な職務は米軍基地内の病院で対処しきれない重症患者を、外部の日本の病院へ搬送することです。軍の中で発生した重症患者に対して、医療知識と英語力を活かして適切な外部病院へのトリアージ・搬送を担うという、非常に重要な責務です。
加えてローテーションとして院内の各科を回ることもありますが、これはあくまで付随的な活動であり、主なデューティーは搬送業務です。
つまりJPFPに参加するということは、医師として医療行為そのものを行うわけではなく、医療の知識と英語力を活かした橋渡し役としての役割を担うということです。この点を正確に理解した上でプログラムに臨むことが大切です。
その職務がもたらす付随的なメリット
主な職務を理解したうえで、JPFPへの参加によって得られる付随的なメリットを見ていきましょう。個人間で意見は異なるかと思いますが、これまでに色々な当事者から聞いた限りでは主に以下の5つが挙げられます。
- USCE(米国臨床経験)を積める
- 英語を学ぶ機会が得られる
- 推薦状の取得と人脈づくりができる
- 給与をいただける
- 比較的時間に余裕があり、留学準備やUSMLEの勉強に充てられる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
① USCE(米国臨床経験)を積める
米国のレジデンシーマッチングにおいて、USCEの有無は採否に大きく影響します。Program DirectorからUSCEがない外国人医師は採用しないという声も聞かれるほどです。(←実際に聞いた話)医学生であれば海外実習という選択肢もありますが、社会人になるとUSCEを得るチャンスが如実に減ります。JPFPではこのUSCEを日本にいながら積むことができるという点が非常に魅力的です。
② 英語を学ぶ機会が得られる
患者も医師も全員アメリカ人という環境で働くため、強制的に英語を使う状況になります。搬送業務においても高い英語力が求められるため、実践的な医学英語を身につけられます。教科書で学ぶ英語とは全く異なる、生きた英語力が養われます。
③ 推薦状の取得と人脈づくりができる
臨床留学において推薦状は非常に重要で、最低でも3通必要とされています。日本の病院に勤務しているだけではアメリカ人医師から推薦状を書いてもらうことは難しいですが、1年間共に働くことで信頼関係を築き、質の高い推薦状を得られる可能性があります。またその過程で築いた人脈が、後の留学に大きく役立つこともあります。
④ 給与をいただける
日本を離れることなく給与を得ながら留学準備を進められます。非常に現実的な話ですが、渡米準備には相当な経済的な準備が必要となります。給与をもらいながらUSCEを積めるJPFPは経済的な観点からも合理的な選択肢です。軍によって給与体系は多少異なると思われるため、ご興味のある方はエクスターンやオープンハウスの際に質問してみるのがいいでしょう。
⑤ 比較的時間に余裕があり、留学準備やUSMLEの勉強に充てられる
JPFPでは日本の病院勤務と比べて時間的な余裕が生まれやすい傾向があります。その時間をUSMLEの勉強や留学に向けた書類準備・情報収集に充てられる点も、多くのフェロー経験者が挙げるメリットの一つです。
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全国6病院——北から順に(個人的な見解を含む)
現在JPFPを持つ在日米軍病院は全国に6病院あります。年間の総枠は約25名ですが、年によって変動することがあります。6つすべてに足を運んだ経験をもとに、公開情報に個人的な見解も交えながら紹介していきます。
①三沢空軍病院(青森県三沢市)
- 軍種:空軍
- 受入枠:約3名(年によって変動あり)
- 東北地方唯一の米軍病院
- Open House開催あり
- 公式サイト:https://www.misawa.af.mil/
- 個人的な見解:比較的ゆったりとした雰囲気で、落ち着いて留学準備を進めたい方には特におすすめです。事務の方々もとても優しかったです。田舎で寒冷な地方ですが、羽田空港から三沢空港に直通の便があるのでアクセスも決して悪くはありません。
②横田空軍病院(東京都福生市)
- 軍種:空軍
- 受入枠:約3名(年によって変動あり)
- 2025年度のフェロー経験が日経メディカルでも紹介されており注目度が高まっています
- Open House開催あり
- 公式サイト:https://www.yokota.af.mil/
- 個人的な見解:都心(特に立川)へのアクセスも比較的良く、生活環境は整っています。
③横須賀海軍病院・USNH Yokosuka(神奈川県横須賀市)
- 軍種:海軍
- 受入枠:約6名
- 1952年から続く歴史ある日本人研修プログラム
- ExternshipとOpen Houseの両方を開催
- 公式JPFPページ:https://yokosuka.tricare.mil/About-Us/Fellowship-Program
- 個人的な見解:最も歴史が長く、伝統的な病院として人気が高い傾向にあります。情報も豊富で、OB/OGも多いのでネットワークを形成しやすいです。
④岩国基地病院・Naval Family Branch Clinic Iwakuni(山口県岩国市)
- 軍種:海兵隊・海軍
- 受入枠:約3名(年によって変動あり)
- 2022年創設の比較的新しいプログラム
- Open Houseのみ開催(Externshipなし)
- USMLEスコアの基準は特になし
- 主な搬送先:岩国医療センター(基地から車で約10分・搬送の95%以上を受け入れ)
- 年間搬送件数:350〜400件
- 公式サイト:https://www.mcipac.marines.mil/Installations/MCAS-Iwakuni/
- 個人的な見解:田舎ではありますが、非常に過ごしやすい環境でおすすめできる病院の一つです。岩国医療センターとの連携が密接で搬送件数も多く、英語を使う機会が豊富なため語学力を集中的に鍛えたい方に特に向いています。(公開情報より)
⑤佐世保海軍病院(長崎県佐世保市)
- 軍種:海軍
- 受入枠:約2名(年によって変動あり)
- 九州地方の拠点病院
- Open House開催あり
- 公式サイト:https://www.cnic.navy.mil/regions/cnrj/installations/cfa_sasebo.html
- 個人的な見解:最も新しいプログラムで、ゆったりとした雰囲気があります。田舎ではありますが過ごしやすい環境で、じっくりと準備を進めたい方に向いています。人数が少ないことが気になるかもしれませんが、決して業務負担は多くない印象です。是非、Openhouseに参加して色々質問されてみてください。
⑥沖縄海軍病院・USNH Okinawa(沖縄県)
- 軍種:海軍
- 受入枠:約8名(年によって変動あり)
- Open House開催あり
- 公式JPFPページ:https://okinawa.tricare.mil/About-Us/Employment-Opportunities/Japanese-Fellowship-Program
- 応募方法ページ:https://okinawa.tricare.mil/About-Us/Employment-Opportunities/Japanese-Fellowship-Program/How-to-Apply
- 個人的な見解:横須賀と並んで歴史があり人気の高いプログラムです。沖縄という環境もあり、生活面での魅力も大きいです。近年受け入れ人数が増えているようです。やはり、ネットワークを重視したい方には魅力的でしょう。病院規模も大きいです。
応募するにはどうすればいいか
各基地では毎年6〜7月頃にExternshipやOpen Houseを開催しています。現役のフェローやProgram Directorと直接話せる貴重な機会です。
ただし一部の病院ではExternshipの締め切りが5月となっているため、準備は4月から始める必要があります。「6〜7月に開催されるなら余裕がある」と思っていると手遅れになるので注意してください。
フェローへの採用にあたって、ExternshipやOpen Houseへの参加が必須条件とされているわけではありません。ただ実際に現地を見て、フェローや医師と直接話してから応募する方が、志望動機も明確になりますし、ミスマッチも防げます。可能であれば一度は足を運んでおくことをお勧めします。英語力と明確な志望動機の準備を進めておくことが大切です。
【よくある勘違い】JPFPは初期研修の代わりにはならない
JPFPに関してよく寄せられる質問として「米軍病院のフェロープログラムを初期研修医の期間として代替できないか」というものがあります。
答えははっきりNoです。
JPFPと日本の初期研修プログラムは全く別物です。JPFPは臨床留学を目指す医師にとって非常に価値ある経験ですが、日本の医師免許取得後に義務づけられている初期研修を代替するものではありません。初期研修を終えていない状態でJPFPに参加しても、日本での保険診療に必要な資格は得られません。
JPFPのデメリットも知っておこう
メリットが多い一方で、事前に知っておくべきデメリットもあります。
① 日本の専門医プログラムに乗ることができない
JPFPに参加する期間は、日本の専門医取得プログラムのキャリアから外れることになります。臨床留学を本気で目指すのであれば問題ありませんが、将来的に日本での専門医キャリアも視野に入れている方は、タイミングを慎重に考える必要があります。
② 給与は高額ではなく、貯金が築きにくい
給与をいただけるとはいえ、医療行為を行うわけではないため日本の勤務医と比べると給与水準は高くありません。場合によっては生活費を補うために非常勤勤務を掛け持ちする必要が生じることもあります。「給与がもらえる」という点は事実ですが、経済的な余裕が大きく生まれるわけではないことも理解しておきましょう。
③ 競争があるため、希望するプログラムに必ずしも入れるわけではない
JPFPは全国で年間約25名という限られた枠のプログラムです。特に横須賀・沖縄といった歴史のある人気病院は競争率が高く、希望する病院に必ずしも入れるとは限りません。第一希望の病院に落ちた場合に備えて、複数の病院を視野に入れておくことが大切です。また採用されなかった場合の代替プランも事前に考えておくことをお勧めします。
JPFPはこんな人に向いている
- USMLEの勉強中で、並行してUSCEも積みたい
- アメリカ人医師からの推薦状と人脈が欲しい
- 日本を離れずに米国式の医療現場を経験したい
- 臨床留学の前段階として英語力を鍛えたい
- 給与をもらいながら留学準備を進めたい
最後に
JPFPは全国に約25名/年という限られた枠のプログラムです。毎年6〜7月の応募シーズンに向けて、早めに情報収集と準備を始めることをお勧めします。特にExternshipを希望する場合は4月から動き出すことが肝心です。
6つすべての病院に足を運んだ経験を持つ日本人医師はほとんどいないと思いますが、そんな立場から言えるのは、どの病院も臨床留学への準備としては非常に有益な環境が整っているということです。それぞれの病院に個性があり、自分のキャリアプランや生活スタイルに合った病院を選ぶことが大切です。詳細な条件や最新の募集情報は各基地のOpen HouseやExternshipで直接確認されてください。
それではまた、しーや。
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