質問コーナー㉙~何故、あなたはUSMLEが解けないのか?~

CBTCBT

何故、あなたはUSMLEが解けないのか?

ハイ!ナイストゥミーチュー!セザキングです。「セザ本」のWeb動画撮影も無事(?)に終わり、いよいよ執筆作業は終了となりました。企画から約1年かけてようやく出版となります。企画ものではなく、ながーく使える教科書的、そしてバイブル的な存在でありたいと思っております。興味ある方は、是非チェケラ、そしてポチ。

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さて、今回は質版箱に届いた質問というよりも嘆きに対してレスをしていきます。日本の医学生であれば誰もが知っておいて損はないことです。

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質問文

まずは質問からご覧ください。

文面からその非常に辛い気持ちがありありと伝わってくる。しかし、最初に敢えてきつい言葉で伝えておきたい。「(知識の浅さに)今気づいてよかったね」と。

何故、CBTの順位や国試の点数に拘ってはいけないのか

これまでに何故、僕が事あるごとに「CBTの順位に拘るな」「国試の点数に拘るな」と言ってきたか、この文が全てを物語っている。簡潔に言えば、残念ながらどれだけCBTや国試をやっても「本当に」臨床に役立つ知識は得られないということだ。誤解を招かないように追記するが、国試やCBTの勉強はもちろん意味がある。当たり前だ。しかし、レベルの上限が決まっているのが問題なのだ。

イメージしやすく例えると、70点満点のテストで70点取ろうとしても、80点には及ばないということ。60点取れるようになったら、100点満点のテストにチャレンジしようということだ。

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「本当に」役に立つ知識とは?

さて、「本当に」役立つ知識とは何か?

それは臨床現場で医師として具体的な判断を求められる時に必要な知識だ。精神科のことばかりになってしまって恐縮だが、国家試験で覚えないといけない薬の名前は非常に少ない。最近は薬を名前を問うような問題も出てきたが、実際に選択肢を見てみると

・イミプラミン:抗うつ薬
・オランザピン:抗精神病薬
・ジアゼパム:ベンゾジアゼピン
・リチウム:気分安定薬

のように、そもそもカテゴリーが異なる薬が並んでいるので、どれがどのカテゴリーに属しているか分かれば容易に正解することができる。しかし、USMLEでは、

オランザピン
クエチアピン
リスペリドン
アリピプラゾール
ハロペリドール

のように、「抗精神病薬の中でどれを選択するか」、というような極めて実臨床的な判断が求められる。「抗精神病薬が必要なのは当然だけど、その中でどれを選択するの?」と聞いてくるわけである。

前にも言ったけど

看護師「先生、このせん妄患者にどの薬を使いますか?」

医師「抗精神病薬!」

では臨床は成立しないのだ。

看護師「どの薬ですか?」

と聞き返されるのがオチである。

日本の医学教育は何故かそこまで踏み込んだことを教えることはなく、実臨床で必要な知識は卒業後の自己学習に委ねている。よく考えると意味不明だ。

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診断を問う問題の国試とUSMLEの違い

また、「診断を問う」問題でも国試とUSMLEで明確に違う点がある。それはUSMLEでは正確な診断基準、つまり明確な診断根拠が分からないと絶対に正解できないようになっているということ。一方で国試は多少ぼやっとした診断根拠があれば正答できてしまう。

これは質問者の「最後一歩踏み込んだところの知識がなく正解できないようです」という言葉に集約されている。

例えば、schizoaffective disorder とdepression with psychosisの違いを述べることはできるだろうか。国試では決して出題されないが、USMLEはこの違いを問うてくる。曖昧な記憶では決して正答できないようになっているのだ。

質問者の言葉を借りると「統合失調症のような症状とうつ病の症状を両方持っているのが統合失調感情障害ということは知っているけど、うつ病でも精神病症状をきたす患者がいるってことは気にしてなかったし、確かにそれを鑑別するような踏み込んだ知識が無くて正解できない」という感じだろう

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国試の勉強を頑張ってもUSMLEは解けるようにならない

例を挙げるときりがないが、国試の勉強をどれだけ頑張ってもUSMLEを解けるようにならないのは当然なのだ。それは「英語だから」ではなく、単純に知識不足なのだ。確かに日本とアメリカで異なる点はあるが、それでも必要とされる知識の大半は共通している。

予備校で国試の授業をしている立場ではあるが、事実は事実として伝えないといけない。「本当に役に立つ知識を学んでほしい」と心から思うのだ。

マウントを取るためではなく将来役立つ知識を身につけるために勉強すべし

日本の試験は「最低限の知識を持っているか」問うためにある

繰り返すがCBTも国試も学ぶこと自体は非常に有意義だ。しかし、その試験の本来の目的は何か改めて考えよう。「医師(又は医学生)として【最低限の】医学知識を持ってるどうか確認する」ことであり、そうであるがゆえにその試験の序列はその後の人生に影響しない。そして、当然だが試験のレベルもそれほど高くできないのだ。つまり、その試験を確実に合格できる力を身に着けたら、それ以上のレベルを求めて勉強したほうが有意義なのだ。

人間は簡単すぎることをしても成長しにくい。公式発表は無いが国家試験も平均点は8割を超えている。得点率が9割を超えている人も多い。9割も取れているのであれば、5-6割しか取れないものに挑戦したほうが有意義ではないかと思うのだ。

「できない」自分を受け入れるのは難しい

しかし、これらの事実を知らないと「CBTで9割取れる優秀な」自分が「全く正解できない」自分を受け入れるのは難しいかもしれない。でも、これは起こるべくして起こったことだ。でも、悲観することは全くない、今は気づいたのは遅くない、むしろ早いくらいだ。そのままQ&A➡Rx➡UWと進めていけば確実に所謂「奥深い」知識は身につく。断言しよう。

UWを始める予定とのことだが、個人的にはRxを挟んだほうが良いとは思う。UWはQ&Aよりもさらに2段階くらい難しいので心が完全に折れる可能性がある。よって、本来Rxから始めたほうがいいのだ。しかし、既にUWを購入済みとのことなので、UWから開始することも絶対にダメとは言わない。いずれにせよ、「最初は」全く太刀打ちできないことを覚悟しておく必要はある。

基本的にはQA➡Rx➡UWの流れを推奨

質問者にメッセージ

最後になるが、君は本当に良い経験をしている。お山の大将にならずに済んだのだ。そして、ここから奥深い知識を一つずつ身に着けていけばいい。心が折れそうになる経験は辛いかもしれないが、それは「できない」自分を受容するために必要な過程なのだ。失敗を経験してこなかったほどそのダメージはでかい。

そして勉強を継続していくと辛い気持ちは少しずつ緩和されていく、勉強が軌道に乗ればもうこっちのもので合格は目の前にある。今はつらいと思う。でも、大丈夫。

と、まぁ、いつもの流れになります。
こういう質問本当に多いんですよ。「CBT9割の僕が解けないなんて、、、」みたいな感想がめちゃ多い。だって、USMLEのほうが断然難しいんだからしょうがない。そして本当に役に立つ。だからこそ優秀な医学生はマウントを取るために勉強するのではなく、将来真に役立つ知識を得るために勉強してほしいと思います。

もちろん、勉強全然してこなくてCBTも国試も合格が怪しい人はまずは目の前のことをしっかりやりなさい。話はそれからです。ここ大事ね。

まぁ熱くなったけど、こんな感じのいつも通りの回答になります。

では、しーや。

 

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