USMLE問題の改変についての解説と考察
ハイ!ナイストゥミーチュー!セザキングです。本記事では超重要なUSMLEの問題に関する情報の解説とその考察をしていきたいと思います。
今回はタイトルにも「問題の大改変」と記載していますが、実は公式にはそのような発表は一切ありません。従って、大前提として今回取り扱う情報自体の多くが個人の推察を多いに含んでおります。ある程度確からしいと判断し、このような記事にしていますが確証があるものではないことを理解して頂きつつ、読み進めて頂ければと思います。
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今何が起きているのか?
2024年8月現在、実はUSMLE界隈が大きく揺れています。その発端は6月末頃でした。僕の周りには多くの受験生がいますが、その一人がこの時期にCKを受験されました。模試でも240を超えているので余裕で合格されると思っていましたが、その方が「やばいです。まじで落ちました。これまでと問題があまりにも違います。」と仰るのです。聞けば、UWやNBMEの問題とは全く違う傾向の問題ばかりが出題され、特に倫理系の長文問題が多く全然時間が足りなかったというのです。
プール問題の入れ替え
これだけを聞くとそれほど驚くべきことではありません。USMLEは日本のCBTのように大量のプール問題より出題される形式であり、そのプール問題は毎年入れ替わります。その時期は大体5-6月頃であり、同時期に試験結果の発表が遅れるのはそのためです。(ソースが探せないのでも知っている方がいたら教えてほしいです)そのため、6月頃にある程度の問題の入れ替えがあっても不思議ではありません。しかし、今回の入れ替えはただの入れ替えではなく内容を大きく変えるものかもしれないのです。
出題内容と出題率の変更
USMLEは従来、問題の内容の出題率を変更する時には必ずアナウンスしてきました。
こちらの記事をご覧ください。これは2020年にコミュニケーション問題が追加される際に発表されたアナウンスです。このように出題率に変更がある時には必ず発表があります。しかし、2024年にはそのような発表は未だにありません。
現在のSTEP1の出題内容・率はこちら
STEP2CKの出題内容・率はこちら
USMLE概要⑪~2020年2月12日に発表された3つの重大な変更点:変更点と考察編~
騒がしい界隈
一人のみの受験生の体験・感想であればそのまま聞き流したかもしれません。しかし、その時期にRedditやXなどのSNSを見てみると確かに「問題文が長い!」などの書き込みが目立ちました。またその後当オンラインサロンのメンバーが数人受けましたがほぼ全員が「今までと違う」と答えるのです。
あまりにも口をそろえて同じような感想を述べるためその信憑性は高まっていきました。結局公式のアナウンスは一切ないため「そうかもしれない」としか言えません。それでも、大改変が起きただろうと言えるのには根深い背景問題があったのです。
ネパール事件
ネパールと聞いてピンとくる方もいるかもしれません。2024年1月にECMFGがある発表をしました。それは「不正をした一部のネパール人の試験結果を取り消す」というものでした。
事件の詳細までは記載されていませんが、知り合いの知り合いがネパール人医師であるため、そこを通じて得た情報によると国単位で問題のシェアをしており、あまりにもハイスコアが頻発していた。ある情報によれば、CKの260、270超えの多くがネパール人だったようです。事件が明るみになったのはハイスコアが不要なSTEP3でもハイスコアが連発していたことで、それに違和感をもったECFMGが介入をしたようです。
ネパール人の多くが試験結果の取り消しを受けることになり、レジデンシー中であっても勤務が出来なくなってしまった方もいるようです。不確定情報が多いためどのように発覚したのかという詳細についてはこれ以上は触れませんが、事件があったことは確かなのです。
ECFMG側の対応
ECFMGは事件の発覚を受け、一部のネパール人の試験結果を取り消しました。想像に易いですが当時のネパール人医師界隈はまさにカオスだったようです。しかし、果たしてこの取り消しだけで問題が解決するのでしょうか。このネパールの件は恐らく氷山の一角であり、今回の取り消しだけでは根本的な解決にはなりません。そもそも、これはUSMLEに限らずどこの国でも、どこの学校でも起きていることです。構造上の問題を解決しない限りは鼬ごっこになるだけです。
そして、さらに背景にはIMGの流入を制限したいという思惑もあるはずです。そもそもアメリカ全体は移民問題に揺れています。医療過疎地域にIMGを配置したいという事情がある以上は、露骨に厳しい制限がかかるとは考えられませんが、少なくとも今まであらゆる対策が講じられてきました。
問題の漏洩を防ぎ、かつIMGの流入も防ぐためには?
このような背景から今回の問題改変問題について考えてみると様々な思惑が見て取れます。今回、サイレントで改変があったと仮定して、どのような変更があったのか考察してみます。
②問題の長文化(=コミュニケーション・カルテ問題の増加)
③医学知識の難化
④英単語・英文法の複雑化
⑤AIの導入?
何度もお伝えしていますが、これらは全て不確定な個人の推測です。今後の勉強方針に大きな影響があるため現時点でお伝えしていますが、信じるかどうかは個人の判断に委ねます。
①プール問題の大幅変更
これは誰もが最初に思いつく大きな変更でしょう。②と被りますが、明らかに倫理系の問題の出題量が増えているというのです。しかし、ここである事実に目を向ける必要があります。CKの場合では、社会医学・倫理系の問題の出題率は10-15%と予め決まっています。
しかし、受験生はもっと出題されていると言います。そんなことがありえるのでしょうか。可能性があるとすれば、それらの倫理系の問題の多くは所謂パイロット問題(試行段階で採点対象外の問題)であり、出題率には含めないという計算なのかもしれません。例えば、CKの出題数318問のうち採点対象が250問と仮定して、その12%の30問が倫理系であり、残りの採点対象外68問のうち半分34問が倫理系の問題だったとすると、全部で64問になり8ブロックあるので1ブロックあたり8問、つまり1ブロック40問の2割ということになります。(極端な例ですが)
これは妄想の域を出ませんが、このようなケースを想定すると体感で2割が倫理系の問題であっても全く不思議ではないということです。
②問題の長文化(=コミュニケーション・カルテ問題の増加)
①に付随する内容ですが、プール問題の変更に伴い倫理系以外にカルテ問題が増えた可能性もあります。カルテ問題と聞いても多くの方はピンとこないと思いますが、今は亡きSTEP2CSで受験生が作成したカルテのような内容がそのままCKの問題文として出題されます。端的に言えば、即時にカルテから大事な情報を読みとる実践的な問題なのですが、当然文章自体は非常に長くなる傾向にあります。
これらの変更により、ある受験生曰く「問題文は最短で10行、最長で6スクロール」とのことでした。カルテ問題は、AMGはもちろんのこと、STEP2CSを経験しているとそれほど苦ではありませんが、慣れていないIMGにとっては少し厄介です。加えて、UWにはカルテ問題はそれほど含まれず、倫理系の問題は多く載っているものの体系立った勉強がしにくいのが問題として浮彫となったのです。
③医学知識の難化
これはより不確実な内容かもしれません。試験内容の詳述はできないので、抽象的な表現になりますが、そもそも問題自体の難易度が上がっている可能性があります。例えばある遺伝性疾患の「型」まで問われるようなこともあるようです。またあまりにも専門的な知識を求められるため、専門医同士が相談しても答えが出ないような問題もあったとか。
これに関しては心配し過ぎる必要はありません。問題の難化は誰にとっても影響があるため、AMGであっても簡単には解けないはずです。採点方法の公式発表はされていないものの、相対評価の要素は含まれると考えられるためIMGのみが一方的に不利になるということはなさそうです。
ただ、これらの細かな知識をどのように理解・暗記していくかという問題は残ります。「UWのどこにも載っていなかった」という意見も散見されます。
④英単語・英文法の複雑化
ここも完全に推察に過ぎませんが、英単語が難しい、文法自体がやや難解で読みにくいという意見もありました。難しいという表現自体が主観的であるため、客観性の富む考察をすることは難しいのですが、確かにこれもあり得る話です。何度もお伝えしていますが、ECFMG/USMLE関連の多くの変更はIMGに不利になるように動いています。
これには深い社会的背景があるため、USMLEという断片を切り取って良し悪しを下すことは出来ませんが、我々がやるべきはその変更自体を批判するのではなく、受け入れて柔軟に対応していくことです。
従来のUSMLEは英語が読めなくても知識があれば解ける「医学英語の試験」でしたが、英語自体が難しくなると「英語の医学試験」になります。その違いは、英語力の有無が大きく試験結果に影響するということです。英語が読めないと問題を解けなくなる可能性があります。
その真偽は今後も探求していきますが、受験生がすべきことは日々英語力を高めることを意識するということでしょう。特に医学部1~3年生は焦ってUSMLEの勉強をするよりは一般英語の勉強をしたほうがいいかもしれません。
⑤AIの導入?
これは面白半分に聞いてください。漏洩が発覚し、プール問題を大幅に入れ替える、これは当然の流れだと思います。しかし、これで根本的な解決になるのでしょうか。そう、結局いたちごっこなのです。であれば、どう対策すべきか。それは「AIで無限に問題を生成すること」が答えの一つではないでしょうか。
問われる知識自体は有限なので、それを問うまでにプロセス、つまり問題文をAIにて少しずつ作り変えることで問題を無限生成することが可能になります。日本の国家試験は試験作成委員が手作りで作成していますが、必ずしも人の手によって作る必要があるのかと問われると疑問です。
最近の受験生曰く、とにかく問題文が「無駄に」長いとのことでしたが、AI導入の可能性を問うと「重要じゃない情報が多すぎるので不自然だった。ありえるかも。」と答えていました。確証はゼロですが、AIの導入は、現状の問題を解決をする上で最適解かと思われます。
我々IMGはどうすべきか
さて、これらの変更があったと過程した場合に我々IMGはどうすべきでしょうか。改めて対応可能で解決すべき問題を挙げると以下になります。
②英語対策
③医学知識対策
①長文化対策
何よりも優先すべきは速読です。とにかく1問あたり90秒以内で解けるように日々演習していく必要があります。練習次第でスピードは必ず速くなっていくので意識して取り組んでいきましょう。最初は3,4分かかっていた人も本番前には1分強で解けるようになっていました。
続いて、倫理・カルテ系の問題についてです。これらの共通点は問題文がさらに長いことなのですが、UWでは対策しにくいという点も非常に大きな問題です。そこで最近はAmbossが再注目されています。他の記事でAmbossの再評価について詳しく考察しますが、Ambossは倫理系問題・カルテ問題も豊富であり、かつノートが秀逸で良くまとまっているので、今後はAmbossで体系的に学び、追加で問題を解きたい時にUWを利用するというスタイルが主流になっていくような気すらしています。
②英語対策
単語や文法が難化した場合、英語力の有無が試験結果に大きく影響する可能性があります。そこで日々英語力を磨くために自己鍛錬が必要になりますが、特に低学年のうちは焦ってUSMLEをやらずに基礎英語力を上げることに注力したほうがいいと思います。
いずれにせよOETを受験することになるのである程度の英語力は必要になります。CK合格後に途方に暮れる人も少なくないため、一般英語の勉強を意識されてください。
③医学知識対策
これは従来通りに一生懸命に勉強するしかないのですが、問題はUWの検索機能があまり便利ではなく難しい問題に遭遇した時に必要な情報が探しにくいという声をよく聞くのです。そこでやはり痒いところに手が届くAmbossが注目されてきているというわけです。
まとめ
今回は2024年に起きた「かもしれない」問題の大改変について解説と考察を行いました。真実は闇の中ですが、IMGの流入制限という目的を考慮すればどれも現実的な変更と言えるでしょう。アメリカはIMGの入り口を完全に閉ざしたいわけではないと思います。少なくとも医療従事者に関してはある程度の需要があるはずです。
研修病院のマッチング記事や動画でもよく持論を述べていますが、人と良好な関係を築く上で最も重要なことは常に「相手にとってメリットのある存在になること」です。このような変更にも柔軟に対応していく必要があります。今回の変更にも「英語が苦手なIMGは要らないよ」というメッセージが込められているのかもしれません。一般英語の鍛錬を日々積み重ね、速読できるように意識していきましょう。そして、今僕が注目しているAmbossに関する記事を近日中に出す予定なので、それも要チェックしてください。
ではまた!しーや!
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